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名古屋家庭裁判所 昭和44年(少ハ)5号 決定

本人 Y・H(昭二三・一一・四生)

主文

本人を昭和四四年三月二六日まで特別少年院に引続き収容する。

理由

本人は昭和四三年三月一二日名古屋家庭裁判所で特別少年院送致の決定をうけ、同月一三日愛知少年院に収容され、同日少年院法第一一条一項但書による収容継続決定をうけた。

愛知少年院長松井昌一作成の収容継続決定申請書の要旨は昭和四四年二月二四日現在本人は一級下の段階にあり、順調に進めば同年三月一日には一級の上に進級するが、わずか一〇日では最高段階における教育を十分果しえないので、その訓練の為に二ヵ月収容継続を申請するというにある。

そこで、本人は入院後自動車整備科に編入され同四三年六月二六日新入生暴行によつて減点をうけたが、以後反則事故もなく順調に進級し、同四四年三月一日現在一級上の段階にある。知的には準普通級、性格的には軽卒、お人好し、上つ調子な所が指摘されるけれども、上記事故以後は自重し、同四三年一二月一日には実科賞、同四四年一月一七日は六ヵ月無事故賞をうけ教育の成果はあがつている。

本人には内縁の妻があるが、同女との関係は双方の両親も認めているところ、本人は出院後は自動車整備工として稼働し、同女と正式に婚姻したいと考えている。保護者は本人の退院後は自宅に引取り自動車整備工として稼働させることをのぞみ、時期をみて内妻と正式に婚姻させて独立して住まわせたいと考えているる。内妻は面会の回数も最も多く、その都度本人を激励し将来の生活にもしつかりした考えをもつている。そうすれば出院後の保護環境にも問題は無いものと認められる。

ところで、同四四年三月二六日三級自動車整備士(種類、シヤシとガソリン・エンジン)の試験が行なわれ本人もこの受験を希望し、当日少年院から引卒されて受験に行く事になつている。当裁判所は上記受験によつて同自動車整備士の資格を確得する事が少年の犯罪的傾向の矯正をより確たるものとすると考えるところ、少年の性格にも照らして、受験日である昭和四四年三月二六日まで収容を継続するのを相当と考え、少年院法第一一条第三項、第四項を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 笹本淳子)

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